インタビュー

  • Vol.01学生時代
  • Vol.02絵柄の変化
  • Vol.03音楽とイラスト
  • Vol.04書籍とイラスト
  • Vol.05中村佑介 〜今後〜

これから、全5回に渡って、中村佑介のイラストレーションの歴史を辿るインタビューをおこなっていきたいと思います。
第一回目は、最初期にあたる作品群。学生時代に描いていた絵について。

Vol.01学生時代

 

今回、画集に収録された絵の中で一番古いのはどのような絵ですか?

中村

シリーズものの作品で、50枚くらい描いていた絵ですね。大学の授業で、絵本を作らなきゃいけなかったんです。でも僕はストーリーものを考えずに、一枚一枚の絵のなかにストーリーと文字を入れて、一枚で完結しているみたいにしたかった。そういう作品を50枚描いて、まとめて本にしました。収録されている絵はそのうちの一部です。ポップな感じじゃなくて、色がないものをどんどん作って行きたいと、その時は思っていました。それで、白・黒・赤とかを使って。その時はぜんぜん背景を描いていなくて、文字と人物、それプラス何かちょっと……という感じでした。

 

じゃあ、その課題がきっかけで、絵に文字を入れようと思ったんですか?

中村

はい。文字が入っている絵は今回の画集にいろいろ入ってますね。もう絵本の課題を外れている頃の作品にもその名残があって。だんだん文字がなくなって来るんですけど…。

 

シリーズで描いた50枚には、共通する少女像はあったんですか?

中村

絵本ということだったから、セーラー服を着た女の子ばっかりだったらちょっとなぁっていうのがあって、いろんな服を着せて、ワンポイントの色で見せようとしていました。で、それが終わってからは、今度は違うことをやってみたり。当時の評価として、「色や服が可愛い」ってよく言われて……。色や服が可愛いという感想が多かったんだけど、ちょっと僕、それがしゃくにさわって……(笑)。

 

大学何年生くらいの時に描いた絵ですか?

中村

三回生とか四回生ですね。

 

評価として、服がおしゃれだと。「おしゃれな絵だね」って感じで言われたんですね。

中村

そうそう。そんなのぜんぜん描きたかった訳じゃなかったのに。確かにそれも必要条件ではあったけど、僕は画面と文字の掛け合わせの面白さを見せたかったのに「何だよ……」と思って(笑)。じゃあ、そういう要素を全部なくして行こうと思いました。自分のイメージを伝えるために、今度は色をなくす、ファッション性を全部なくすとか考えて、全部セーラー服にしてやろうと思ったりしました。

 

なるほど。敢えてファッションデザインをせずに、制服で統一したんですね。

中村

その方が、「洋服」っていう部分に目が止まらないから良いかなと思いました。でも、描いてみて分かったんですが、「セーラー服」というのも意味を持っちゃうんですよね。何かノスタルジックであったりとか、切ない感じであったりとか。セーラー服で描いていても、そういう意味がない場合もあるのに、今度はそういうイメージが前面に出ちゃいました。「セーラー服を描かないんですか?」とか言われたりして。「そうか、そういう風に伝わるんだ」と思って、またセーラー服を描くのをやめたりしました(笑)。

 

色がないっていうと、写真で言うと白黒写真に近くなるもんね。白黒写真っぽくてセーラー服というと、みんな昭和40年代くらいの雰囲気を感じたのかもしれないですね。中村さんはそういう意図はなかったんですね。では、絵のなかに背景を入れ始めたのは?

中村

文字入りの絵を描いたあと、この文字を取るということは、絵のどこかにストーリーや時間性を入れないといけないと思ったんです。そうすると背景を入れることが必然になりました。文字の代わりになる説明を入れたかったので、背景の練習を始めたんです。

 

絵のなかの登場人物がいる世界の雰囲気みたいなものを、文字で伝える代わりに背景で…。直接言葉では語らないけれど何かが伝わるようにということですね。

中村

はい。背景とかポーズとかを考えました。物語性みたいなものも。

 

文字入りの絵本課題の後で描いた作品は、どういう際に描いた絵だったんですか?

中村

自分で勝手に描いていたものです。でも、結局それが大学の卒業制作になりました。元々はそのつもりではなくて、卒業制作は卒業制作で何か別のことをしようと思っていたんです。でも、自分の絵を描いている時に、時々先生に見せたりしていたら、「良いじゃん、これを出しなよ」って言われて……。だから僕、結果的に卒業制作をしなくて済んだんです。

 

なるほど。今回の画集には大学の卒業制作も入っているんですか?

中村

はい、170ページ前後の作品は全部そうです。

 

卒業制作というと、何枚かまとまった数を描いたと思いますが、何枚くらいですか?

中村

卒業制作は展示スペースが限られていたので、大きい絵と小さい絵を合わせて10枚くらいですね。気に入っているのだけをバーッと並べて…。展示期間が二週間くらいあったから、時々入れ替えたりとかしました。

 

要素としては人物がいて、背景があって、物語性があって……いろんな要素が入っていますね。この頃、絵を描いていて楽しかったのはどういう感覚でしたか?

中村

何かなあ…細かく描くとかですかねえ。ペンとマジックインキで描いてました。定規も使っていないんですね、この頃は。全部フリーハンドで。最初に真っ直ぐな線を描いてから、それをフリーハンドでなぞっていました。僕は大学の時にパソコンを持っていなかったんですよ。専攻がパソコンのコースだから、もちろんパソコンを持っている人の成績が良くて…。僕はパッケージデザインの課題を作っても、金色の折り紙を切り抜いて貼ったりしていて、やっぱり汚かったんですよ。完成度も低くて…。それがすごく悔しくて、だから、逆手に取ってやろうと思っていました。整頓されていないものをギュウッと詰めたんですよね。マジックとミリペンだけ使ったというのも、学校への反抗という気持ちもありました。結局は、そういう絵が展覧会で高評価を得たんですけど、そのことによって、パソコンじゃなくても今の若い人たちを振り向かせることは出来るんじゃないかって自信は付きました。当時はそんな気持ちでしたね。

 

画材も選ばずという感じですね。例えばリキテックスとか、良い画材を選ぶわけでもなかった。

中村

なかったですね。普通のマジックなんですよ。

 

今回の画集にある初期作品にも、マジックで塗った、ラフな感じの作品がありますね。

中村

はい。あまりペンのタッチが見えないように描いているんですけれども、実際はマジックをずーっと塗っていって、木目みたいに塗り跡が付いているんです。それは意図していないんですが、見る人は意図してやったんだと思ってくれる(笑)。それもまあ、良いか…と。僕自身はムラが汚いなあ…と思っていました。でも、今回はムラがあるまま載せようと思っています。いま販売しているポストカードとかだと、パソコン上で塗り直しているんです。そういうバージョンもあるけど、今回はせっかくの機会だからそのまま載せようと思っています。

 

たぶん大事なことは、「絵にムラがなくて綺麗な画面だ」ということじゃなかったんですね。もっと全体のストーリーや雰囲気が描きたかったわけで。

中村

だから、その後もシルクスクリーンをやったり、切り絵をやったり、貼り絵をやったり、いろんな形式で試しています。絵具を使った絵もあるんですけど、手法はどうでも良かったりして…。使う道具にはポリシーはないんです。面白ければ良いかなっていう感じですね。

 

なるほど。そうやって絵も徐々に変わっていくんですよね。それでは、この続きはまた次回、お聞きしましょう。

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